LLMによる心室期外収縮の起源推定に関する共同研究成果が国際学術誌に掲載

AIネイティブなB2Bソフトウェア受託開発会社である株式会社世良(本社:東京都目黒区、代表取締役CEO:遠藤 嵩良、以下「世良」)は、埼玉医科大学国際医療センターとの共同研究成果が、国際学術誌『Journal of Cardiovascular Electrophysiology』に掲載されたことをお知らせします。

本研究では、12誘導心電図の画像から、心室期外収縮(Premature Ventricular Contraction:PVC)の発生起源を右側・左側に分類する方法を検証しました。従来型の畳み込みニューラルネットワーク(CNN)に加え、大規模言語モデル(LLM)による一括判定と、心電図所見を複数工程に分けて抽出する段階的解析を比較しています。

当社所属研究者は、本論文に共同筆頭著者として記載されています。

研究の背景:PVCに対するカテーテルアブレーションでは、不整脈の発生起源が心臓の右側にあるか、左側にあるかを事前に推定することが、手技計画を検討するうえで重要です。 一方、12誘導心電図から発生起源を推定するには、対象となるPVC波形を見分けたうえで、V1誘導の極性、胸部誘導の移行、電気軸など、複数の所見を順に評価する必要があります。専門家にとって確立された判読であっても、非専門家が同じ手順を安定して実施することは容易ではありません。 本研究では、LLMが心電図画像を直接読み取り、最終判定に至るまでの所見を段階的に出力することで、判定プロセスを確認可能にする方法を検証しました。

157例の12誘導心電図画像を対象に3方式を比較:研究対象は、PVCまたは特発性心室頻拍に対するカテーテルアブレーションが成功し、発生起源が確認された157例です。最終的な治療部位に基づき、右側起源103例、左側起源54例に分類しました。 使用した12誘導心電図はJPEG画像として取り込み、患者を特定し得るヘッダー情報を除去したうえで、224×224ピクセルに統一しました。評価では、データを患者単位で学習用80%・評価用20%に分割し、異なる5つの乱数条件で検証しています。 比較した方式は次の3つです。 CNN方式:心電図画像に特化して事前学習したResNet-18を用いる画像分類 LLM一括判定方式:心電図画像の認識から最終分類までを一度の処理で行う方式 LLM段階的解析方式:対象波形の同定、所見抽出、数値化、ルール統合を分けて行う方式

段階的LLM解析はCNNと数値上比較可能な識別性能:段階的LLM解析から生成した連続スコアの平均AUCは0.720 ± 0.045でした。比較対象となるCNN方式の平均AUCは0.712 ± 0.054であり、段階的LLM解析はCNNと数値上比較可能な識別性能を示しました。

主要な検証数値:研究対象 157例、右側起源 103例、左側起源 54例、評価条件 5回、段階的LLM解析の平均AUC 0.720 ± 0.045、CNN方式の平均AUC 0.712 ± 0.054、判断が難しい中間領域 約21% AUCは、右側起源と左側起源を識別する性能を、閾値に依存せずに示す指標です。1に近いほど識別性能が高いことを表します。

所見抽出と最終判定を分離し、経路を追跡可能に:LLM一括判定方式では、対象となるPVC波形の認識、所見の解釈、最終分類が一度に処理されます。この構成では、最初の波形認識を誤った場合、その誤りが後続の判定に影響する可能性があります。 段階的LLM解析では、主に次の工程へ分けました。 対象となるPVC波形の同定/V1誘導の極性の評価/胸部誘導における移行の評価/電気軸などの所見抽出/各所見の構造化・数値化/Pythonで実装した決定論的ルールによる統合 各工程の出力を分けて保持することで、最終結果だけでなく、どの所見が分類に用いられたかを確認しやすい構造としました。 ただし、LLMが生成する説明は、モデル内部の判断過程を完全に再現するものではありません。本研究で示したのは、判定に利用した中間出力を外部から点検しやすくする設計上の可能性です。

約21%の症例が判断の難しい中間領域に分布:段階的LLM解析のスコア分布では、全体の約21%が−5から0の範囲に分布しました。この範囲では、実際の右側起源と左側起源がおおむね半数ずつ含まれ、心電図画像だけでは明確に分けにくい中間領域であることが確認されました。 この結果は、AIにすべての症例を強制的に分類させるのではなく、判断が難しい症例を「判定困難」として専門家の確認へつなぐ設計の重要性を示しています。 また、左側起源と判定するための基準を厳しくすると、陽性的中率を高められる一方で、見逃しが増えて再現率が低下します。本研究の厳格な閾値は学習用データから設定したものであり、実際の臨床利用には外部データおよび前向き研究による検証が必要です。

世良の技術支援範囲:埼玉医科大学国際医療センターとの共同研究契約では、世良の担当業務として、次の領域が定められています。 心電図解析/心電図等に関する学習用データセットの作成・ラベリング/心電図解析・画像解析に関するAIモデル開発/心電図解析・画像解析に関する統計解析/心電図解析や生成AIを用いた研究用システム開発 本研究では、この枠組みに基づき、医療分野の専門的な知見を、検証可能なデータ構造、AIモデル、評価方法へ落とし込む技術支援を行いました。

今後について:本研究は、LLMを医療専門家の代替として利用することを目的としたものではありません。心電図画像から所見を段階的に抽出し、判断の根拠と不確実性を確認しやすくすることで、専門家による評価を補助する研究上の可能性を検証したものです。 世良は今後も、医療研究者と連携し、性能だけでなく、再現性、追跡可能性、人による確認を含めた医療AIの研究開発を進めてまいります。

本記事で紹介するAIモデルおよび解析手法は研究段階の成果です。医療機器として承認されたものではなく、個別の患者に対する診断、治療方針の決定、または医師その他の医療専門家による判断を代替することを目的としたものではありません。実用化には、独立した外部データや前向き研究による追加検証が必要です。

基本情報

発表日
2026年9月4日
共同研究先
埼玉医科大学国際医療センター
研究対象
157例
右側起源
103例
左側起源
54例
評価条件
5回
段階的LLM解析の平均AUC
0.720 ± 0.045
CNN方式の平均AUC
0.712 ± 0.054
判断が難しい中間領域
約21%
論文名
Large Language Model-Based Localization of Premature Ventricular Contraction Origins: A Retrospective Diagnostic Accuracy Study
掲載誌
Journal of Cardiovascular Electrophysiology
オンライン公開日
2026年8月1日
DOI
10.1111/jce.70464

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